【読了】アイスマン

アイスマン

100億円以上の被害を出した、オンラインハッカーの実話本です。
オンライン上によるサーバーを狙ったゼロデイ攻撃やクライアントを狙ったバックドア手法により数百万件のカード番号を取得し、リアル店舗のカード認証の脆弱性を用いて被害を出したマックス・ヴィジョン(旧名マックス・バトラー)。その素顔に迫った本です。

学生時代から夢中になったものがあると、一点に集中し周りが見えなくなる性格がある一方で、教えることが好き、貢献していると実感するのが好きという表の面があるハッカーですが、一時はその能力が買われてFBIでホワイトハットとして仕事をしている時代があります。

そして、現実世界では人を敵視することがない反面、オンラインの人格では誰も信用することがなく敵視ばかりしている人物でもありました。その心の揺れ動く様が描かれています。

マックスは2018年まで拘束されている予定ではありますが、オンライン世界が無くなったマックスの温厚さ、知的さ、そして現在ではオンラインで衝動が抑えられない事があることを自覚している点が評価され、再び数時間だけ牢獄を抜けFBIで講演する機会を得たりしています。

今回はおとり捜査が最も効果を発揮しましたがマックスの逮捕をきっかけに60人程度のハッカーが国境を跨ぎ一気に捕まるなど、沢山の実績や手法がFBI側でも確立され、歴史に残るものとなりました。

ただ、本書で最後に述べられているクレジットカードの認証としてアメリカは現在でもセキュリティホールを抱えたまま変更しない方針となってしまっていることに関して警鐘を鳴らしています。
損失と利益に関する費用対効果から変更は行われませんが、アメリカが実施しなければ、国際的な標準化が難しいと思います。次のマックスがいつ出てきてもおかしくない状況を避け、早くEMVまたは”チップ・アンド・PIN”という対応策を採用し、国際標準とすべく犯罪から学ばなければなりません。

(参考)逮捕後のWired記事

アイスマン

【Analytics】検索順位と流入セッション数(検索結果とCTRのデータと似たようなデータが得られた)

サンプリングデータだけれども横軸がGoogle検索結果順位、縦軸が流入セッション数。
1位のセッション数を100とした場合の相対グラフを書いてみたけど、確かにeMarketer等の検索順位とCTRの関係図に近い値が得られた。



検索エンジン側からのCTRではなく、サイト運営の中から見た流入比率から結果が出た点でとても面白いデータじゃないかと思う。
外からのCTRと中のセッションデータを組み合わせて考えること、あと月次検索件数等を組み合わせるともっと面白いデータになると思います。

検索ボリュームが分かれば、どのくらい流入を伸ばすことができるというシミュレーションが可能ですね。
または戦略の立て方として、狙いたいキーワードを事前に定めて現在の順位を調べる、そこから最適化してどの程度流入を増やし、コンバージョンさせるかというファネル想定分析も可能になる。

結構キレイにデータが出てきてややビックリ。

【読了】How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜

How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜


本書は「チェンジマネジメント」という概念を学ぶものであり、それは「真剣になれば、より効果的なチェンジ・エージェントになる方法を学ぶことができる」というものです。

組織の継続的な改善で最も難しいのが「他人の行動を変えること」。もちろん「人間は他人の行動を変えることはできません。」という概念は正しいけれども、少なくともやってみることが出来る。これがチェンジマネジメントの基礎概念です。

そのためにはマインドセットを変えることが重要となります。

チェンジマネジメントにおける4つのモデルがこれ。
1.システムとダンスする(PDCAモデルを活用)
2.人々のことを気にかける(ADKARモデルを活用)
3.ネットワークを刺激する(普及曲線モデルを活用)
4.環境を変える(5つのIモデルを活用)

PDCAで言うなれば、人を動かすための目標の明確化、小さな誰でも理解できるステップからの開始、高速なフィードバックと改善です。

ADKARモデルでは
1.変化する必要性の認識(Awareness)
2.変化に参加し、変化をサポートしたいという欲求(Desire)
3.変化させる方法(および変更がどのようなものか)の知識(Knowledge)
4.日常的に変化を実際に起こす能力(Ability)
5.起きている変化を継続するための補強(Reinforcement)
を意識することが大切です。

言うだけでなく実際に行なって見せ、人間の本質欲求である地位や名誉、好奇心などをターゲットにし、語るだけでなく実際に心と身体を動かして教えあう。最後に繰り返し実行し、小さな成功を祝福することで、正しい方向へ進んでいることを実感させ、継続的にコミットメントする価値を提供することが大事です。

また、その考えをウイルス的に伝播させるには普及曲線を意識することが大事です。

心理学者Kurt Lewinによれば、人の振る舞いとは人とその置かれた環境の関数です。何が起こっているかをはっきり見えるように環境を変えることも大事なのです。

本書は組織の中の自分という視点だけでなく、自己変革としても利用できる良書だと思います。それは人の心理に基づいたものでもあるからです。
How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜

【読了】挑まなければ、得られない Nothing ventured, nothing gained. (インプレス選書)

挑まなければ、得られない Nothing ventured, nothing gained. (インプレス選書)

及川さんのブログをまとめ、さらに本書のために加筆を加えているものですが、及川さん自身のハッカーマインドを強く感じ、また東日本大震災に対するHack for Japanの取り組みに関しては本当に涙するものがあります。
そして、そのハッカーマインドを持った人達がその場で様々な行動を起こし、変化を起こし、リアルへ影響を強く及ぼす事の重要さを学びました。

また、及川さん自身の「VisionとMissionー変化を求めることを恐れていては何も実現できない」という主張への同意と、そのVisionとMissionを実現するためにObjectivesとAction Itemsへ落とし込むという流れはまさにWhyからHow、Whatの流れです。

Why : Vision。どういうものを創りあげたいと思っているか、どういう世界や社会、または会社にしたいと思っているか

How : Mission。それを実現するために、あなたやあなたの組織が行うべきことを表したもの

What : ObjectivesとAction Items。それを実際に遂行可能な単位に落としたもの

企業だけではない、仕事だけではない。個人のレベルにおいてもWhy、How、Whatで考え続ける事がハッカーマインドの根幹なのかもしれません。

挑まなければ、得られない Nothing ventured, nothing gained. (インプレス選書)

【読了】インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

心理学に精通する著者が、認知心理学、社会心理学、統計学的な知見から人の行動や特長を説明し、その上でウェブインターフェースを考える上でのポイントをまとめている本です。

タイトルにあるとおり100におよぶ人間の行動原理を通じて導かれるポイントとしては重複するものもありますが、はっと気付かされるものも多いでしょう。

心理学を学問としてかじったことがある人、および同系統の本を読んでいる人にとっては知っているものも多いと思いますが、それをウェブインターフェースへと繋げて理解できているかというと、そうでもないかもしれません。その意味では本書でポイントとして概念を端的に示している点で、若干疑問を持つ部分はあったものの非常に評価できるものだと思います。

再度考えさせられたのは「メンタルモデル」と「概念モデル」の部分です。「メンタルモデル」とは「対象のシステム(ウェブサイト、アプリケーション、製品など)を利用者が(心の中で)どう捉えているかを表現したもの」です。「概念モデル」とは「実際にシステムを利用するユーザーが、そのシステムのデザインやインタフェースに接することによって構築するモデル」のことです。

すなわち、通常「メンタルモデル」と「概念モデル」に差異がない、つまりユーザーが期待するものとウェブインターフェースに差異がない場合に最もコンバージョンが高い、またはその他ウェブのKPIが高い効率のよいサイトになるというものです。

ウェブマスター側はその「メンタルモデル」を把握するために、エスノグラフィやアンケートなど、様々な手法を用いて代表的なモデルを作り出し、それをペルソナとするわけです。そのペルソナから「概念モデル」を作り出す事が大事とされていますが、ユーザーの知識レベル、想定した特定グループと実際のユーザーが外れる事により使い勝手が悪い、または人々に受け入れられないサイトと化してしまう事があります。ペルソナは1体である必要はありませんが、本書を読んでいるとターゲットが外れていないという前提でも複数体作っておく必要があるかもしれないと感じました。

本書ではなく、別の著者の書かれた本で述べられていますが、人の行動の95%は無意識の部分による意思決定とされています。「メンタルモデル」と「概念モデル」が不一致となると、無意識レベルから意識上に引き上げられます。
そうなることで、そのサイトに対しマイナスのラベルが貼られたり、他社と比較されることによるマイナス評価やソーシャル系サービスへマイナス評価が拡散されることにもなるのです。

ただ、この「概念モデル」に関しては現在のところ、WEBで今まで培われてきたリンクは青文字下線有りのようなデザインなどのUIはもちろんのこと、ECであればAmazonのような一般的によく利用されるサイトのUIが期待されるわけです。
本書では新しくでてきたiPadで表示されるNew York Timesのデザインが、そういった従来のUIに則っておらず、クリッカブルな領域かどうかも判断出来ない状態だという問題が存在するとされています。

鶏卵ですが、クリックなどのマウスだけだった世界から数多くのデバイスやリモコンを使った操作などが行われ始めたため、「概念モデル」もそれに合わせて変更されることが必要なのかもしれません。

ウェブサイトに対する人の一般的な「メンタルモデル」はどこから生まれたかを考えると、ノーマンの「行為の7段階モデル」に従って行為のフィードバックの知覚、解釈、評価によって当初は形成されてきたと思います。そういう意味では、新しい「メンタルモデル」の形成は新しい「概念モデル」の形成から始まるのではないかと思うわけです。

プログレッシブ・エンハンスメントと同様の考えで、もしかするとIAだけでなく「概念モデル」自体もデバイスにより変えていかなければいけないのかもしれません。
まだまだタッチ操作に関するアフォーダンスという意味でのデザインは確立されていませんが、スマートフォンやタブレットに親和性のあるサイトが増えているなか、近いうちに新しい「概念モデル」が形成される可能性があることは間違いないでしょう。
ウェブマスターはそれに合わせてユーザーの「メンタルモデル」の微妙な変化に注意すべきだと思います。

ただし、新しい「概念モデル」が人の認知行動から外れる事はありません。本書で基本を学ぶことはとても価値のあるものなのです。

その他、全100指針全ての一読をオススメします。

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

【Analytics】セグメントという言葉に要注意。

Segments tell you that a particular page was accessed during a visit - that's IT! 
If you use a link in your segment and then view data for that segment - it will tell you all the visits that had atleast one view of the link you have added in your segment definition.

For your requirement where you want to know how many people accessed a particular set of pages ONLY. Go to Content  > Top Content report. (On the left-nav)
 - Go down to the bottom of your screen to click Advanced Filters
 - In the box near the green Page enter the last words /videos|/events|/profile  (Seperated by | )
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【読了】Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学

Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学

タイトルそして章タイトルにすべての意志が詰まっている本書ですが、スティーブ・ジョブズと10年以上も仕事を共にした筆者だからこそ書ける事実、特にマーケティングや会社としてのビジョン部分に関して知ること、感じることが出来る本です。

本書タイトルの「シンプル」という言葉自体は最初から最後まで常に登場します。それは章タイトルが「シンプル」さを補強するものであるからでもあります。
物事をシンプルに考えることは常に正しい事を導くわけではありませんが、しかしながら「シンプル」に物事をすることは、より考えぬく事と同義でもあるのです。
複数のサブアイディアを考えたり、「これならいけるだろう」という程度の認識では全くダメで、更に深く考え一つのシンプルにたどり着く事が重要です。

また「人間はシンプルさを好む」という1つの真理に基づき、複雑な解決策よりもシンプルな解決策を好んで選ぶという事実を理解し、信じ、利用する事が大きな成功をもたらすという信念に基づいているのです。

本書を読むと時々シンプルさを失っているのではないかと思う状況もあります。しかしながら必ず最後にはシンプルなものが勝利するのです。それはAppleのマインドを社員・役員や取引先も含め理解していること、そしてそのシンプルさをスティーブ・ジョブズが選択すること自体、人の真理を突いており、その事実を認識せざるを得ません。

スティーブ・ジョブズの人柄を本書でより理解することが出来、彼の信念や考え方、行動の一貫性を理解することが出来る良書だと思います。

Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学

【読了】最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう

最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう

本書はクリティカル・シンキングのツールやその説明を行なっているような本ではなく、「クリティカル・シンキング」というものにどのようなものがあり、今までどう発展してきたかを捉え、その上でクリティカル・シンキングがとても身近なものであること、及びビジネスにおいてはクリティカル・シンキングツールに対する理解を深める事が出来るものになっています。

その意味で、読み始めからその内容を理解するまでは本書に対する期待と外れていると考えてしまい、なかなか頭に入って来なかったのですが、目的と概念を学ぶにつれ本書の価値の大きさを強く感じるに至りました。

著者が述べている通り、クリティカル・シンキングとは簡単に言えば「ものごとをきちんと考えよう」という事であり、学術的に言えば「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で反省的な思考」というものです。

クリティカル・シンキングは私自身ビジネス系のものに頭がいきますが、根底にあるものが哲学系、そしてそれを般化し、人間を意識した現在のクリティカル・シンキングの中心概念を構築しているのが論理学系と心理学系の2系統あります。そして、その中心概念からビジネスに応用出来る部分を切り出してビジネス系のクリティカル・シンキングが構築されるなどの発展を見せているのです。

哲学系のクリティカル・シンキングでは、「自分の思考について考えること」、筆者の定義では「見かけに惑わされず、多面的に考えて、本質を求め続ける」事、そして「日常的な思考を「より広く拡散させ、より確かに収束させる」ことでパワーアップしようとするもの」というものですが、これは人が自分の枠組みで考えてしまいやすいという心理学的な側面もふまえ、「問題はないか?」「他にどんな可能性があるか?」などの適切な問いにより自分の思考に対し疑問を持ちつ事で問題を拡散させることの重要さが説かれているわけです。

本書内では面白い概念が非常に多く散りばめられていますが、その中で「6色のハット」というクリティカル・シンキングの6タイプを紹介すると
・ブラック・ハット:批判的・否定的な見方をしたり反論する思考
・ホワイト・ハット:統計や情報、事実などといった客観的データに焦点をあてる
・ブルー・ハット:冷静に自分の思考をコントロールする
・グリーン・ハット:新しい物の見方を生み出す創造的思考
・イエロー・ハット:アイディアを建設的に楽観的に肯定的に育てる思考
・レッド・ハット:感情や予感、直感に基づく思考
です。

本書で様々な概念を学ぶことにより、ビジネスで利用しているクリティカル・シンキングツールが、どの部分をあぶりだす事に特化しているかを知ることが出来、結果として偏った見方をしていないか、自分の都合の良い結論を導き出していないかを知ることが出来るようになるのではないでしょうか。その意味で、本書は非常に有効で何度も読み返す価値のあるものだと思います。

最近、もしかすると従来のクリティカル・シンキングの王道が崩れ始めてきているのではと思う事もあります。それはマッキンゼーやBCGなどのコンサル会社が実践しているものですが、それを一度クリティカル・シンキングの概念図に落としこみ、再度定義し直す事でもしかするとまた新しい概念が生まれるのかもしれません。または従来のクリティカル・シンキングのままで、そのツールの中でも特に結果を生み出す概念というだけなのかもしれません。

新しく出てくる考え方について、本書の概念で再度捉え直す事も面白いでしょう。

最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう

【読了】究極の顧客サービス「ザッポス体験」 ―顧客も社員も幸せにする5つの法則

究極の顧客サービス「ザッポス体験」 ―顧客も社員も幸せにする5つの法則

ザッポスに関する本は今までも数多く出てきたが、本書はさらに深く、その文化や思想の実行を具体的に書いている本です。
「顧客に感動を与えるには、まず社員を感動させなくちゃならない」という顧客が書いたTwitterからの引用文は正に的を射ており、社員の立場にとってはモチベーション3.0の概念、つまり内発的な動機付けを強化し、また顧客にもサプライズを提供するなど顧客の立場、目線で「ワォ!」と言われるサービスを提供しています。

「電話が最高のソーシャルメディア」という言葉にあらわれている通り、顧客との接点となるコンタクトセンターを通じた人間対人間のコミュニケーションを大切にしていることもザッポスの特長です。

もちろん、ウェブサイトを通じてモノを販売している以上、ウェブサイト自体もとても重要ですが、そのウェブサイトに対する考え方もとても学ぶものが多いでしょう。
例えば、「サービスを通じてワォ!を提供するために、顧客に余計な手間をとらせないことを重視している」という基本概念から、UXに対する並外れた改善姿勢や、フォトグラファー20名により1日に16,000点の商品画像や動画の撮影、アップを行うという徹底ぶりだけを見ても、その顧客を対象としたサービスに対する姿勢を伺うことが出来るでしょう。

ECという意味においては顧客の期待するものに全て応える事が最低条件としてつねにチェックされています。その期待とは
1.ウェブサイトに掲載されている商品情報が詳細で正確であること
2.チェックアウト時に示される金額に誤りがないこと
3.約束の期間内に商品が配達されること
4.注文通りの商品が手元に届くこと
5.買った商品が想定した用途に合っていること
です。

また、サービスの付加価値を高める工夫としてあげられているのは
1.スピード重視
2.製品とサービスに関する社員の知識を高める
3.サービス・リカバリーに力を入れる
4.予測や常識をくつがえすサプライズを提供する
ことです。

それぞれの詳細の説明や事例は本書に譲りますが、一般的にコストセンターと言われがちなコンタクトセンターで、彼らの努力が実を結んだ事、およびスタッフのヤル気をかきたてるためにも顧客にワォ!を提供した後の顧客からの感謝・感激のフィードバックをもらう事がモチベーションを高めるためにも重要なのです。

他にも本書には社員教育やそのカリキュラム、イベントなど沢山のワォ!がつまっており、とても刺激的な本に仕上がっています。

究極の顧客サービス「ザッポス体験」 ―顧客も社員も幸せにする5つの法則

【読了】「習慣で買う」のつくり方

「習慣で買う」のつくり方

「人間の行動の95パーセントは無意識に操られている」という内容が近年脳科学、認知心理学の研究により結論付けられました。

筆者はこの95パーセントの部分を「習慣脳」と呼び、それ以外の意識して考えるものを「判断脳」と呼び議論がスタートします。「習慣脳」は更に2つのタイプがあり「オートマチック習慣」と「自分ルールによる習慣」に分かれます。

・オートマチック習慣 : 買い慣れた店で買い慣れたものを買う「自動的に選択するモード」

・自分ルールによる習慣 : 自分のなかのルールに従って何かを買おうとする「自分ルール重視モード」と、お買い得やほかにも試してみようかなどと考える「新しいものを試してみたいモード」(「バーゲンモード」「クチコミモード」「バリエーションモード」)

結論から言えば、「商品がヒットするかどうかは、消費者の習慣脳にある記憶と関連付けられるかどうか」にかかっています。

サービスで言うならば、よくアンケートによる調査が行われますが、本書内ではそれは逆効果だと言います。それは過去にアンケートではイイ結果が出ているのに、いざ商品やサービスを発売・開始すると全く流行らなかったという多くの事例に基づいた結論ではありますが、普段習慣脳で判断している事をアンケートにより判断脳で考えさせる事により"適当な"理由付けがされ、回答される事が多い事。そして競合他社のサービスが想起された場合自社サービスに対する批判が判断脳により悪い方向へ理由付けされ、習慣が途切れる可能性がある事によるものです。

習慣脳は「同じ結果が生じる(または、同じ恩恵に預かる)行動を繰り返す事」で育まれ、判断脳で考えていると「他の商品に乗り換えられやすい」という特長を持ちます。「競合他社から顧客を奪うには、その顧客の習慣を壊さねば」ならないのです。その突破口は「自社商品のことを判断脳で考えてもらうように仕向け」る必要があるのも、また事実なのです。

ウェブサイトで言うなれば、「判断脳に向けて設計する部分と、習慣脳に向けて設計する部分」を理解する必要があります。「消費者が何も考えずに自然と選びたくなるようにすること」がマーケターの務めでもあるのです。
サービスやパッケージ、価格、性能、その他どれか一つでも気に障るようなことがあると、習慣化が中断され、判断脳が顔を出す可能性があります。「判断脳が支配を続けている限り、その人はリピーターにはならない」のです。
とはいえ、「わからなければ尋ねればいい」という意識を植え付ける事で判断脳から再び習慣脳へ移行させることも可能でしょう。

判断脳にも習慣脳にも新商品・新サービスを意識してもらいたいなら、ストーリーやトレードマークを用いる事も効果的だと著者は述べます。消費者自身の中にあるイメージに反するものとなると逆に習慣化は遠のき、クレームが増加する可能性があります。

本書では「今、インターネットは巨大な判断脳と化している」という一文がありますが、これはSNSやクチコミ、広告が溢れかえっている事に起因するものかもしれません。ただ、やはり常に考えていなければいけないのが「どんなときに、どんなことで、自社ブランドを買いたいと思うのか?」を把握しておく事でしょう。

この習慣脳は記憶と密接に結びついている事は間違いありませんが、記憶を「強化」することで顧客ロイヤルティが生まれます。
本書を読んで改めて、習慣脳を活用したWEBサイトという意味では、ショッピングでは、よく利用されるサイトのUI構造をある程度踏襲しつつコミュニティでは日記、クチコミ、コメント投稿部分は習慣脳へ働きかけ、「回遊」という判断脳ドリブンな部分は探しやすさや比較しやすさを追求すべきだと再認識しました。

「習慣で買う」のつくり方

【読了】なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?

なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?

タイトルが残念だと思う事と、中身も田中氏の自伝的な要素が多く必要な部分だけ読むようなスタイルでも良いかと思います。

現在はロコンドというウェブサイトを運営する株式会社ジェイドの代表取締役である田中氏の本で、本サイトではザッポスと同様「安さ」ではなく「サービス」に重きを置いたECを実現されています。

その田中氏が今の日本に必要な事として最初に述べられているのが「自分の人生に対して責任をもって積極的に「志」に向けて突き進むこと」という一言に集約されています。

そこに至るまで、どのような人生を歩み、マッキンゼーで何を見て何を学び、何を実践してきたか、その心のなかと行動が詳細に書かれています。

本書内では「イシューからはじめよ」という、有名な本のタイトルと全く同じ言葉が登場します。私自身、まだ「イシューからはじめよ」を読んではいないので、これからというところではありますが、本書で「イシュー」の意味を正確に知ることが出来ました。
「イシュー」とは「アクション仮説をするかしないかが、経営にとって重要かどうか」です。即ち単なる「クエスチョン」ではなく「実現可能性」「費用対効果」「顧客魅力度」等のアクション仮説を明確にし、そのアクション仮説が経営にとって重要な指標、いわゆる売上や利益に与える影響が大きいか否か。これが単なる「クエスチョン」ではなく「イシュー」となります。

したがって、"常に「イシューを解く」ために分析をしていなければ、その目的が不明瞭なままやる分析はバリュー(価値)が無い"という事になるのです。

また、「イシュー」を解くための分析における「アクション仮説」は「現在やっていることを変えるべき」というメッセージでなければなりません。ただし、本書で面白いなと思ったのが、136ページ目の部分でイシューを議論した結果、事業の目的が揺らぐような場合、経営側としてはやるべきアクションは変わらないから議論をしても意味が無いという内容です。
これは所謂WHYであり、Value Propositionなのです。そこは決して揺らぐことが無い事は本書内でも同様です。

本書は田中氏の人生から学ぶ事もあるでしょうし、「イシュー」を正確に捉え自分のモノとする読み方もあると思います。本書を読んだ後では、ロコンドの今後の動きも非常に面白く見えるのではないでしょうか。

<追記>おそらく田中氏はまたどこかのタイミングで本を書かれると思います。そこが自分の言葉と思想で溢れている事を願います。

なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?

【読了】リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

システム側ではアジャイル開発との親和性、マーケティングやデザインとは人間中心設計(HCD)、アジャイルと合わせて語られるようになった話題のリーンスタートアップ。顧客やユーザーにマッチしたサービスを立ち上げるための「構築」「計画」「学習」のサイクルを以下に無駄なく回し、そしてマッチしなかった場合に素早く戦略変更(ピボット)するかの方法論の一つです。

起業としてのスタートアップだけでなく、社内アントレプレナーや新規事業立ち上げの際にもとても有効な手法です。
日本では昨年から話題に火が付き、国内での勉強会も盛んに行われるようになりました。マーケター、デザイナーにとっては従来よりHCDの概念が定着しつつあり、リーンスタートアップの概念部分の理解はとてもしやすいものになっていると思います。

リーンスタートアップを取り入れると
・ビジョン(WHY) : 変化なし
・戦略(HOW) : ピボットを繰り返しながらホッケースティック曲線を目指す
・製品(WHAT) : 製品の最適化
することが出来ます。このHOWとWHATの部分に「構築」「計画」「学習」のサイクルをどれだけ小さく、早く回すことが出来るかが重要です。

企業側で計画され、リリースしても顧客側からすれば"その製品がクールかどうか分からないのに友達を招待できるわけがない"という結果となることは往々に存在します。リーンとはトヨタ生産方式の「リーン生産方式」から来ている言葉ですが、リーンの考え方の中心概念は「我々の努力のうち価値を生み出しているのはどの部分で無駄なのはどの部分なのか」というものです。
従来のアジャイル開発を基礎とし、さらに「価値」と「無駄」について考えぬいたものが「リーン」。「リーン」における価値とは「顧客にとってのメリットを提供するものを指し、それ以外はすべて無駄だと考える」ものです。

そこで重要なのは「検証による学び」です。リーンではWHATにあたる製品も機能、さらにはマーケティングキャンペーンもすべて「検証による学び」を得るための実験と捉えます。戦略のどの部分が優れていてどの部分が狂っているのかを検証する実験です。そして、その実験は科学的手法にのっとり、仮説に基づく「予測」と「実測」の比較が重要となります。

仮説の種類としては「価値仮説」と「成長仮説」の2つが紹介されており、価値に対する仮説検証とバイラルとしての成長に関する仮説検証が必要となります。そのためには平均顧客よりもアーリーアダプターを選択し、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる「実用最小限の製品」をまず提供することで効果的な実証データが得られるとされています。

このMVPの考え方もとても重要です。本書でも「誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない」としていますが、低品質のMVPであっても、その後の高品質な製品開発に役立つのです。
そして製品やサービス開発で問われるのは「この製品を作れるか」ではなく、「この製品は作るべきか」「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」です。

MVPはサービスによって様々で、シンプルなスモークテストに過ぎない物から、プロトタイプで問題が多く機能もかけているものまで幅広い。
MVP自体がブランドを傷つけるような事があるのであれば、別サービスやブランドとして出す事が最も安全な方法でもあります。そして往々にしてMVPは悪いニュースをもたらす事を覚悟すべきなのです。

評価とピボットの部分についても、とても重要です。「虚栄の評価基準」で判断するとピボットがとても決断しにくいものとなりますし、仮説が曖昧だと完全な失敗がなくなり、これもまたピボットできなくなる原因となるのです。
ただしピボットとは方向転換として1からやり直す事ではなく、「それまでに作ったものや学んだことをその目的を変えて再利用し、もっと優れた方向をみつけること」なのです。それはWHYが変わる事が無いので当たり前でもあります。ただHOWが変わるだけなのです。

リーンスタートアップでは最初に述べたとおり「構築」「計画」「学習」のサイクルをいかに早く回すかが重要と述べましたが、それを実現するのが"小さなバッチ"という考え方です。ここでいう「バッチサイズ」とは「段階的に進む作業において、ある段階から次の段階に進む仕掛け品の量」のことです。
それは、リリースする機能の数だったり、作業量だったりと様々なものがありますが、バッチサイズが大きくなれば大きくなるほど、それもまたピボットすることを難しくする1要因となるのです。したがって、バッチサイズとして1機能で顧客に見せられるようなものであれば、そこでテストすることも良いでしょう。
本書でもこれは「構築-計画-学習のフィードバックループを競合他社より短い時間で回せる」という点が効用だと述べられています。

本書の考え方はアジャイル等、従来のシステム的な考え方を知っている人にとっては、また新しい手法が出てきたと思うだけかもしれませんが、学ぶ部分としてはドキュメントよりもMVPというプロダクトにより顧客から学ぶ事、そして正しく評価することが重要です。またデザインで古くから用いられてきた「デザイン思考」の概念やHCDの概念をプログラム側へも導入していくという点で多くの発見があるでしょう。
逆にデザイン側にとってはアジャイル並びにバッチ概念を得ることでスプリットテスト(ABテスト)の可能性や会社・サービスの中でいかに重要な位置にいるか把握することも可能だと思います。
マーケティングとしてはシステム及びデザインでの手法を学び、プロトタイピングやMVPとしてのマーケティングや検証へ繋げることが出来るでしょう。

今はセミナー等で聞かない事がなくなった「リーン」という考え方ですが、会社のビジネスモデルにおける自身の位置付けや仮説検証、「Value Proposition」や提供チャネルという大枠に加え、実行からピボット、そしてキャズムを超えた時のホッケースティック曲線(トルネード・ボーリングレーン)へと繋がっていき、従来までの知識がすべて繋がり、とても面白いと感じています。

リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

【読了】小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

「未来を予測するもっとも確実な方法はそれを自分で創りだすことだ」

本書では「小さな賭け」、即ち「具体的かつ即座に実行可能な行動によってアイデアを発見し、テストし、発展させていくこと」を繰り返す事の重要性、そして大きな成功をもたらす事を実例を交えて語られています。

ピクサー、Google、Amazon、HP、グラミン銀行、建築家のフランク・ゲーリーなどを中心に、実例が多く散りばめられています。

本書内では「小さな駆け」の原則が最初にまとめられていますが、これは「創造的に生産性を高め、心を自由に解き放つための」方法です。

・実験する(試行:素早く行動、素早く失敗)
・遊ぶ(遊びの雰囲気から出てくる創造的アイディア)
・没頭する(全身で環境に浸り、洞察を得る)
・明確化する(問題の再定義)
・出直す(柔軟性:問題の見直し)
・繰り返す(繰り返しのテスト)

「小さな駆け」という意味では「実験する」事と「繰り返す」事が中心になると思いますし、Amazon等の書評にある通り、タイトルと内容の不一致(乖離)がとても大きいものになると思います。

しかしながら、それ以外でも本書から学ぶものは大きいのではないでしょうか?

「小さく賭ける」という部分では「失敗を予期し、許容できる」事の重要性が挙げられています。そして企業としても、個人としても一つ一つの失敗を許容するために必要なのは「固定的なマインドセット」ではなく「成長志向のマインドセット」だと言います。

どちらが良い悪いという話ではなく、誰しも2つを持っており、その時々の状況によりどちらかが強くなるというものです。

「固定的なマインドセット」では結果・能力を重視した思考で、その結果・能力を他人から褒められる事の次なる行動としては困難に対し諦めたり、他人の成功を脅威と感じ、その結果として自分の成長が頭打ちになることとなります。

一方「成長志向のマインドセット」は、過程・努力を褒められる事の次なる行動としては困難に直面してもくじけにくく、批判から学び、他人の成功から教訓とインスピレーションを得ます。その結果、更に高いレベルの成功を達成することになるのです。

ピクサーは企業として成長志向へと生まれ変わり結果として文字通り企業として成長を遂げることになりました。今のピクサーは「成功は問題を覆い隠す」と考え、常に問題を発見、対応策の議論、対策を実行しています。

またピクサーの「プラシング(プラス+ing)」という姿勢も良い企業風土を作っているようです。butの代わりにandを用いる事です。これにより批判することから方向を変えることにシフトすることになるのです。

本書内ではGoogleのマリッサ・メイヤー氏の言葉が引用されている部分があります。「制約は問題を具体化し、それに集中させることで、克服すべき課題を明確にする」というものです。
これは少しはっとさせられたのですが、多くの場合、「問題」を見つけることに躍起になる事が多いと思いますが、ここでは制約、所謂「フォース」に焦点をあてることで問題へ立ち返るという発想がされています。

本書では小さく賭けるというタイトルに沿った内容だけが語られているわけではありません。問題発見、アイディアの創造のための場の作り方や発想法など、読む人によって得るものが変わってくるのではないかと思いますが、そういう意味で良い本ではないでしょうか。

小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

【読了】ひらめきトレーニング

ひらめきトレーニング

想像力、独創的なアイディアに価値がないという人は一人もいません。
本書では従来のアイディア想起法、既存企業での実例、著者の会社で行なっている事などを交え、それをステップに分け、どんな組織やグループでも実行できるように説明している本です。

著者の会社では、いきなり大問題と向きあうのではなく、まずはアイディアが沢山出てきやすくなるような遊びも取り入れているのは面白いと思います。

日本でもSCAMPERというアイディア創出法は有名ですね。
・Subtitute(置き換えてみる)
・Combine(組み合わせてみる)
・Adapt(取り入れてみる)
・Magnify/Minimize(大きく/小さくしてみる)
・Put to other use(別のことに利用してみる)
・Eliminate(取り除いてみる)
・Rearrange/Reverse(再調整/元に戻してみる)

ひらめきトレーニング

【読了】WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

nanapi(元ロケットスタート)のけんすうさんが紹介していたことで興味を持った本です。著者のサイモン・シネック氏はTEDでも本書の内容を語られています。

本書では主に企業という側面からWhy即ち、「目的」「大義」「理念」の重要性と、常にWhyへ立ち戻る事、考える事、それを下に意思決定することの大切さが書かれています。

競合が多い業界では顧客は一体何を購入しているのでしょうか。それはWhat(していること)を買うわけではなく、それをしているWhy(理由)を購入していると本書では述べています。
企業は我々のWhatを購入させようとし向けますが、実際の人はWhyを買う。企業側はWhyを伝えず、WhatとHowだけで人を誘導しようとしているのです。

またWhatに固執するとイノベーションが失われます。例えば「鉄道会社だ」と考えている場合と「大量輸送ビジネスに関わっている」と考えていた場合では結果はどう変わるでしょうか?

現在も過去も、変わらず次々と新しい商品が出ては消える状況が繰り返されていますが、アメリカで失敗したTiVo社が言うには「なぜそれが必要なのか、消費者にはわからないのです」。つまり、Whatだけでは商品は売れず、Whyでコミュニケーションを図ることが重要なのです。
過去は、そのWhyが人と人のクチコミだけで伝播していたのかもしれません。実際に利用している状況や体験が気軽にできて、そのWhyがきっかけとなってWhatを購入するという流れだったでしょう。
では、今、インターネットでそれはどうすれば伝わるでしょうか。

インターネットでは、特に現在、伝播がしやすい環境が整っています。
パッとサイトを見て目的がわかる事、それはとてもWhyが伝えやすいかもしれません。サイトそのものはWhatですが、Whyがあれば、それがわかる、そのサイト独自の機能が存在するはずだと思います。
その点で、自分のなかでも色々と考えさせられました。

話は戻り、企業対個人ではなく、一つの企業の中でWhy、How、Whatを見ると、構造化された組織が見えてきます。
Whyがリーダー、Howが幹部、Whatが社員です。即ち、「Howレベルは、Whyを具体的なかたちにするための基盤をつくる個人やグループ」を表します。
企業内においてもWhyの理解はとても重要なものになるのです。

最後に個人におけるWhyです。
Whyは個人の意思決定においてもとても重要で意味のあるもので、また本人にとって価値をもたらすことになります。意思決定の統一性、方向性がもたらされることになるのです。

本書はリーダー向けでも、企業批判のための本でもありません。
もちろん、日本企業という枠や日本という国自身のWhyの無さが欠如していることを認識することもあると思います。しかしながら、個人のWhyを意識するきっかけとして利用されることで、何か小さな変化が起きるのでは?と感じさせてくれる本だと思います。

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

【読了】ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

海外で少しずつ話題になり始め国内にも入ってきたBusiness Model Canvas。Business Model Canvasとはビジネスを考える上でのフレームワークです。日本でも楽天を始めいくつかの企業でBusiness Model Canvasを用いた新規事業の立ち上げや既存事業の拡張などが行われ始めました。

海外ではIBMを始め自治体やNPOなど幅広く利用されていますが、このBusiness Model Canvasを簡単に言えば、ビジネスモデルを作る・考える・拡張するためのモデルです。このCanvasとSWOT、Canvasとブルーオーシャンなどを組み合わせることで強烈なイノベーションを巻き起こす、またはAmazonのようなWeak Point打破をやってのける事が出来るでしょう。

Canvasは企業視点とユーザー視点、そして利益、本書の言葉で言うなれば「顧客」「価値提案」「インフラ」「資金」の領域をカバーした9つの構築ブロックで構成され、戦略の青写真としての役割を果たします。

本書では、海外有名企業をBusiness Model Canvasにのせてみて、実際にどのように顧客に価値を提供し、収益を得、Weak Pointをどのように埋め、逆に強みとしているかが多く例示されています。

そして、まっさらな状態から紙を埋めていくのではなく、考えるための多くの質問やパターンランゲージが散りばめられているのです。

本書第2章の「パターン」では、多くのビジネス書で紹介されてきたパターンランゲージとしての「ロングテール」「マルチサイドプラットフォーム」「フリー戦略」などの紹介・説明を。

第3章の「デザイン」では"デザイン"の世界で主に用いられている手法からビジネスモデルを組み上げるための「ビジュアルシンキング」「プロトタイピング」「ストーリーテリング」などの紹介・説明を。

第4章の「ストラテジー」では外部、内部をSWOT等を交えて評価し、複数の戦略から何を選択していけばよいかのヒントが散りばめられており、またSWOTに関しても強力な質問に答えていくだけで点数化するようなサポートも行われています。

これだけ書いても、本書がいかに内容の濃いものとなっているかが分かるとおもいます。
楽天の方が実際に言っていたのですが、役職的に下のものが考えるCanvasと経営陣のCanvasでは大きな乖離が出るため、実際にCanvasが有効となるパターンとしては経営クラスも交え作成していくべきだということでした。

本書は読んだだけでは全く意味をなしません。必要に応じてツールを組み合わせていくことが必要で、本書内の質問をトリガーに既存事業、外部環境等に合わせた閃きが重要です。その閃きを促す上でも「デザイン」手法等、面白い考え方が多く掲載されている良書だと思います。

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

【読了】次世代コミュニケーションプランニング

次世代コミュニケーションプランニング
5年くらい前だったら流行ったかもしれません。今読むと少し内容が古く感じるところがあります。
4P、4Cモデルを始め、マーケティングの基礎、メディア概論、ソーシャルと消費者についての基本的な内容が書かれています。

<メモ>
「コンテクストプランニング」は、「コンテクストを解釈する、理解する技法」と「コンテクストを生み出す、紡ぎだす技法」の2つで構成されている

コミュニケーションプランニングを行う上で把握しておくべき「4つのコンテクスト」
・消費者文脈(Consumer Context)
・パブリック文脈(Public Context)
・所属産業文脈(Industry Context)
・ブランド文脈(Brand Context)

次世代コミュニケーションプランニング

【読了】リアルタイム・マーケティング 生き残る企業の即断・即決戦略

リアルタイム・マーケティング 生き残る企業の即断・即決戦略

「何かが起きるつどリアルタイムでその情報をつかめば、途方も無い競争優位につながる。ただし、情報の活かし方を知っていれば。」

リアルタイムに情報が取得出来るようになり、またそのデータを活かすことも殺すことも出来るというのが現在のインターネット環境です。そのリアルタイム情報をどのように活かすかが重要となっており、そのためのツールが多く出てきています。しかしながら、未だに分析という立場の人間が少なくデータが役立てられていないというのが現実だと思います。特に複数の解析手段を提供しているからこそ、自分にとって都合の良いデータを取るということもあり得るでしょう。
リアルタイムツールとしてTwitterやFacebook等のソーシャルメディアをマーケティングに活用しているという企業も多いと思いますが、それはツールに過ぎず、ほんとうに必要なのはその情報から発展させた発想です。

コカ・コーラ曰く、「これまでの『コミュニケーション』と『マーケティング』の垣根が低くなってきて」いる時代だと思いますが、その中でリアルタイムのマーケティングとPRを実践し、さらにリアルタイム営業を実現するための仕組みを設ける必要があります。
ネットに常時つながった世の中でのデータを活かす技術も多数出てきており、その例となるリストも掲載されています。今後は「顧客のペース」に合わせた対応、顧客のニーズに即応する形での情報提供を行なっていく事や、チャンスが逃げないうちに行動することなど、リアルタイムというタイミング(When)を重視した戦略が重要になってくる事でしょう。

もちろん、それは新しく入ってきた領域であるので、本書内で述べられているウェブのリアルタイム性を用いたマーケティングに至るまでの、2000年から台頭してきたSEOやその後発展した口コミ情報等、中長期のものと合わせ、それと同等またはそれ以上に重要視しても良い領域へと今後発展していくものと思われます。

リアルタイム・マーケティング 生き残る企業の即断・即決戦略

【読了】アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

広告の効果測定に金融機関のファンド分析に用いられる「アトリビューション」という概念を適用するというもので、2010年頃から日本でも話題になりつつあります。

広告・マーケティング業界におけるアトリビューションとは「コンバージョンに至るまでの流入元(リスティング広告やバナー広告など)の履歴データを使い、コンバージョンへの貢献度を各流入元に配分すること」と定義されます。

分析の内容としては、従来クリックがあった広告に関する分析と効果測定、広告効果の判断を行なっていたが、ビュースルー広告に関しても価値を測ろうというものです。

個人的には、色々と話を聞いていても、どうしても実感の伴わない分野ですが「ユーザー行動の可視化」というキーワードを述べている時点で若干の違和感を覚えます。
5月26日も迫り、再度世界的にトラッキングに関する議論が再燃すると思いますが、今後という意味では「ユーザー行動の可視化」とは逆の方向へ動いていかざるを得ないのではないかと感じます。

少し考えてみると、自分の違和感は、以下のようなポイントに基づくものではないかと思います。

・参照元による重み付けが必要なのではないか
・商材によって、または内容によって購入までの日数というウェブサイト運営上取得した数値データを元にvalueを計算する必要があるのではないか。
・Viewの考え方が甘すぎるのではないか。掲載順位などが考慮されていない。

むしろ、自社内のバナーについてまずはアトリビューション的な考え方を導入するとともに、自社データとの突き合わせ、ビュースルーの最適化を考えることが先ではないかと思いました。

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法

10万人に愛されるブランドを作る!

【読了】10万人に愛されるブランドを作る!

今や社長、副社長含めとても有名になった「ライフネット生命」の元マーケティング部長であり、現在は常務取締役の中田さんの本です。

生命保険という"できればお世話になりたくない商品"をネットで売るためのマーケティングが目指すところは

「企業の理念に共感してもらい、応援者、サポーターを増やすこと」

「認知度を効率良く獲得すること」

この2点を効率良く回すことが、起業当時より大切にされていることです。
企業理念を一人でも多くの方に伝え続け、共感してもらい、ファンになってもらうという流れに乗せるためには、普通のマーケティング手法のみを実行していても全く足りません。

本書ではブランドの人格やインターナル・マーケティング、ソーシャルメディアマーケティングなど、ネットという枠にとらわれない自由なマーケティング事例が紹介されています。

面白いと思う内容がいくつもありましたが、中でも"マーケティングの醍醐味がやらないことを決めるという選択"だという考え方は面白いポイントだと思います。
「お客様が共感したり、愛してくださるのは、「何でもいうことを聞くロボット」のような会社ではなく、こだわりがあり、人格や個性が見える会社」という部分ですが、0スタートの企業がこの理念を最初から貫くことは非常に勇気のいる事ではないでしょうか。

本書を読んで自分の足りない部分が沢山見えてくるだけでなく、それが苦手な分野であることも確かなので、少しでも近づけるような努力が必要だと感じました。

最後に、どの企業でも出来る手法だと感じたのが「調査リリース」というマーケティングです。
マスメディアに取り上げられるような調査データを開示することで、大手メディアから人を流入させることが出来るというものです。そこで外してはならないポイントが、自社の顧客となりうる可能性のある集団が興味を示す内容でなければならないという点です。

実際に調査を行う母集団の選定や調査場所、方法は書かれていないので、その点は熟考する必要がありますが、メディアに採用されるような一般的な調査結果であるならば、MROCのような閉鎖的なものよりはオープンなインターネットのアンケートなどになるのかもしれません。
しかしながら、非常に効果的な手法だと思います。

10万人に愛されるブランドを作る!

【読了】考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

未だに重版されている本です。

ベンチャーという視点における、リーンスタートアップの概念も含めてアイディアというものを再度見つめなおす事はとても重要ではないでしょうか。
2003年の初版本ですが、今読んでも普通に通用する本で、時々見返しても良いかもしれません。

デジタルだけでなくアナログも活用したアイディア出し。そして、何よりアイディア・企画を考える順序として川崎和男氏の「ドリームデザイナー」という本から引用して「デザインはわがまま→思いやり」という言葉を重要視しています。

わがまま:「我=自我」を「まま=思うまま」にすること

として、最初に自分自身がああしたい、こうしたい、という欲求からデザイン恥始まるということです。

調整するのは後でも十分間に合う事なので、まずは「わがまま」に発想することが大切だと述べます。
本書のなかでは、アイディアを発想するための「カラーバス」「マンダラート」「マインドマップ」等の思考・展開法、デジタルへの書き出し方と最終的なまとめ方を、順を追って説明しています。

本書を読んで実際に実行し、自分なりの考具を見につける事が望まれます。

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

【読了】ファッション・ライフのはじめ方

ファッション・ライフのはじめ方 (岩波ジュニア新書)

私服で出勤したりクールビズなど、スーツ以外の自分の個性を表に出すことが多くなってきていますが、そんな中ファッションにあまり目を向けて来なかった自分を今更ながら見つめなおした一冊です。

ファッションでも本書に書かれている「優先順位」には常に気を配るべきです。

1.「自分の身体に合っている」「自分のキャラに合っている」ことのほうが、優先順位が上である
2.20%の法則を実行するのに、ブランド物を使用するのは要注意

何はともあれ、まずは自分の体型、キャラに照らし合わせ「似合っている」ことが重要です。
そして流行を追うといっても、毎年新しいものを買い換える必要はなく、ここで「20%の法則」を取り入れます。5着持っているのであれば翌年に1着買い換えてみるくらいの気持ちでいい。なぜなら、自分に合っている服だからです。

自分に合っているものをわざわざ全て捨てるのはもったいない。

本書では、ファッションライフを始めるに際して、様々なキーワードを提示しています。中でも、服屋でとことん試着するというものも結構面白いと思いました。

僕自身、全然ファッションセンスは無いのですが、再度ファッションを見つめなおす意味で、一読してよかったと思える本です。

ファッション・ライフのはじめ方 (岩波ジュニア新書)

【読了】モバイルパワーの衝撃―スマートフォン時代の事業モデル革命

モバイルパワーの衝撃―スマートフォン時代の事業モデル革命

ビジネスとしてのモバイルは「個客の見える化」「個客の顕在化」としての役目を負っています。日本でもオフラインサービスからのオンライン化ではとりわけ顧客一人ひとりへのサービス拡充を目指している事例が多いが、一方でオンラインサービスにおける顧客サポートは非常に弱いと感じています。アメリカ「テスコ」の顧客分析とターゲティングについては飛び抜けていますが。

あわせてモバイルで重要なのは「When(いつ)」「Where(どこで)」の情報から、いつどこで買ってもらうのかという戦略をこれまで以上に綿密に練る必要が発生してきたという事です。

東京ガールズコレクションのように時間場所を特定し、特定のニーズを持った消費者を集め、消費を喚起するという事例を他の分野、例えばバイクで言うなればオーナーズミーティングへ展開することで、よりニッチかもしれないけれども、面白いサービスの一つとなり得るような気がします。

スマートフォンが出てきて始めて自然と生活の中でGPSでの位置情報など、所謂「シグナル」を利用した顧客サポート化が実行できる下地が出来てきたと思います。

東京海上日動キャリアサービスのコラムで面白いと思ったのが、GPSでいまゴルフ場にいる人にむけてゴルフ保険をPUSHするというもの。応用事例にとして紹介されていたのは、”携帯の加速度センサーや速度計測によるブレーキのかけ方から危ない運転かどうかのリスクカテゴリーを計測する”というものですが、似たような仕組みで面白いサービスがいくつもできるかなと感じます。

最後に、携帯は24時間30センチ以内の距離に存在していると言われるメディアです。飲食店に行けば机の上に必ず携帯電話を置く。それをさらに置き場を設置して、その置き場にFelicaを実装して、常連を認識化し、いつものメニューをすぐに注文できるようにしたり、クーポンが使えたらどんなに幸せだろうと思う今日この頃です。

ビジネス視点ではなく、個として携帯画面にどんな情報があったら面白いだろうという視点で考えると、もっともっと面白い物が沢山出てくるような気がします。

モバイルパワーの衝撃―スマートフォン時代の事業モデル革命

【読了】「ゲームニクスとは何か」

ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書)


2007年に発売されている本ですが、今読んでも多くの気づきを与えてくれる本です。
今多く議論されているゲーミフィケーションというものは、来店頻度・使用頻度の向上を目的とした面白さの追求がメインとなっているけれども、本書を読むと改めて「ユーザー・インターフェース」の重要性を考えざるを得ません。

当たり前といえば当たり前ですが、議論の出発点として、どう考えれば楽しいコンテンツを作る事ができるか、どのくらい効果があるのか、どういう仕組みを作ればより活性化させることが出来るのかという部分に主眼がいっていると思わざるをえない発言が沢山あるわけです。

本書では、「ゲームニクスの4つの原則」として以下をあげています。
・直感的なユーザーインターフェース(=使いやすさの追求)
・マニュアル無しでルールを理解してもらう(=何をすればいいのか迷わない仕組み)
・はまる演出と段階的な学習効果(=熱中させる工夫)
・ゲームの外部化(=現実とリンクさせて、リアルに感じさせる)
取り組むべき優先順位もこの順番で、まずは「ユーザーインターフェース」なのかなと感じます。

2012年になり、デバイス間の連携が強くなりました。
インターネットで似たようなサービスが多く提供され、日々新しいサービスが多く生まれています。

特に現在は写真の分野でインターフェース、概念が大きく変わりました。
自分の写真というFlickr的なサービスから、コレクションという内容が生まれたPinterest。そのコレクションにさらにファンが付いて行くという構造です。これは従来の写真の見せ方や考え方を土台から大きく変えました。あわせてインターフェースも大きく変わりました。

他の分野ではどうでしょう。他社のサイトデザインの踏襲だけでなく、新規に実験的な取り組みとしてβサイト、β機能を追求してみてもいいかもしれません。



ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書)

【Googleショッピング】備忘録(2012/3/19)

・2012/3/19現在、検索キーワードのゆらぎは全く吸収されていないため、商品名にブランド名、色、大きさ等のオプションまで記述しておくと良い。 (英語表記がある場合は、英語とカナ表記の両方を入れる) ・descriptionよりもtitleを重視する ・「関連度順」表示では同一商品を複数店舗で価格を比較出来るように「価格を比較」リンクが存在するが、単一ショップでの掲載よりも、この複数店舗取扱の商品が上位表示される事が多い。(必ずという訳ではないようだ) ・複数店舗取り扱いの判定は「JAN」しか見ていないと思われる。 ・複数店舗取り扱い表示になった場合、商品名や商品紹介文等は最も価格の低いショップのものが表示されるようだ。 ・送料無料設定はちゃんとやるべき。