最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう
本書はクリティカル・シンキングのツールやその説明を行なっているような本ではなく、「クリティカル・シンキング」というものにどのようなものがあり、今までどう発展してきたかを捉え、その上でクリティカル・シンキングがとても身近なものであること、及びビジネスにおいてはクリティカル・シンキングツールに対する理解を深める事が出来るものになっています。
その意味で、読み始めからその内容を理解するまでは本書に対する期待と外れていると考えてしまい、なかなか頭に入って来なかったのですが、目的と概念を学ぶにつれ本書の価値の大きさを強く感じるに至りました。
著者が述べている通り、クリティカル・シンキングとは簡単に言えば「ものごとをきちんと考えよう」という事であり、学術的に言えば「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で反省的な思考」というものです。
クリティカル・シンキングは私自身ビジネス系のものに頭がいきますが、根底にあるものが哲学系、そしてそれを般化し、人間を意識した現在のクリティカル・シンキングの中心概念を構築しているのが論理学系と心理学系の2系統あります。そして、その中心概念からビジネスに応用出来る部分を切り出してビジネス系のクリティカル・シンキングが構築されるなどの発展を見せているのです。
哲学系のクリティカル・シンキングでは、「自分の思考について考えること」、筆者の定義では「見かけに惑わされず、多面的に考えて、本質を求め続ける」事、そして「日常的な思考を「より広く拡散させ、より確かに収束させる」ことでパワーアップしようとするもの」というものですが、これは人が自分の枠組みで考えてしまいやすいという心理学的な側面もふまえ、「問題はないか?」「他にどんな可能性があるか?」などの適切な問いにより自分の思考に対し疑問を持ちつ事で問題を拡散させることの重要さが説かれているわけです。
本書内では面白い概念が非常に多く散りばめられていますが、その中で「6色のハット」というクリティカル・シンキングの6タイプを紹介すると
・ブラック・ハット:批判的・否定的な見方をしたり反論する思考
・ホワイト・ハット:統計や情報、事実などといった客観的データに焦点をあてる
・ブルー・ハット:冷静に自分の思考をコントロールする
・グリーン・ハット:新しい物の見方を生み出す創造的思考
・イエロー・ハット:アイディアを建設的に楽観的に肯定的に育てる思考
・レッド・ハット:感情や予感、直感に基づく思考
です。
本書で様々な概念を学ぶことにより、ビジネスで利用しているクリティカル・シンキングツールが、どの部分をあぶりだす事に特化しているかを知ることが出来、結果として偏った見方をしていないか、自分の都合の良い結論を導き出していないかを知ることが出来るようになるのではないでしょうか。その意味で、本書は非常に有効で何度も読み返す価値のあるものだと思います。
最近、もしかすると従来のクリティカル・シンキングの王道が崩れ始めてきているのではと思う事もあります。それはマッキンゼーやBCGなどのコンサル会社が実践しているものですが、それを一度クリティカル・シンキングの概念図に落としこみ、再度定義し直す事でもしかするとまた新しい概念が生まれるのかもしれません。または従来のクリティカル・シンキングのままで、そのツールの中でも特に結果を生み出す概念というだけなのかもしれません。
新しく出てくる考え方について、本書の概念で再度捉え直す事も面白いでしょう。
最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう
0 コメント:
コメントを投稿