【読了】リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

システム側ではアジャイル開発との親和性、マーケティングやデザインとは人間中心設計(HCD)、アジャイルと合わせて語られるようになった話題のリーンスタートアップ。顧客やユーザーにマッチしたサービスを立ち上げるための「構築」「計画」「学習」のサイクルを以下に無駄なく回し、そしてマッチしなかった場合に素早く戦略変更(ピボット)するかの方法論の一つです。

起業としてのスタートアップだけでなく、社内アントレプレナーや新規事業立ち上げの際にもとても有効な手法です。
日本では昨年から話題に火が付き、国内での勉強会も盛んに行われるようになりました。マーケター、デザイナーにとっては従来よりHCDの概念が定着しつつあり、リーンスタートアップの概念部分の理解はとてもしやすいものになっていると思います。

リーンスタートアップを取り入れると
・ビジョン(WHY) : 変化なし
・戦略(HOW) : ピボットを繰り返しながらホッケースティック曲線を目指す
・製品(WHAT) : 製品の最適化
することが出来ます。このHOWとWHATの部分に「構築」「計画」「学習」のサイクルをどれだけ小さく、早く回すことが出来るかが重要です。

企業側で計画され、リリースしても顧客側からすれば"その製品がクールかどうか分からないのに友達を招待できるわけがない"という結果となることは往々に存在します。リーンとはトヨタ生産方式の「リーン生産方式」から来ている言葉ですが、リーンの考え方の中心概念は「我々の努力のうち価値を生み出しているのはどの部分で無駄なのはどの部分なのか」というものです。
従来のアジャイル開発を基礎とし、さらに「価値」と「無駄」について考えぬいたものが「リーン」。「リーン」における価値とは「顧客にとってのメリットを提供するものを指し、それ以外はすべて無駄だと考える」ものです。

そこで重要なのは「検証による学び」です。リーンではWHATにあたる製品も機能、さらにはマーケティングキャンペーンもすべて「検証による学び」を得るための実験と捉えます。戦略のどの部分が優れていてどの部分が狂っているのかを検証する実験です。そして、その実験は科学的手法にのっとり、仮説に基づく「予測」と「実測」の比較が重要となります。

仮説の種類としては「価値仮説」と「成長仮説」の2つが紹介されており、価値に対する仮説検証とバイラルとしての成長に関する仮説検証が必要となります。そのためには平均顧客よりもアーリーアダプターを選択し、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる「実用最小限の製品」をまず提供することで効果的な実証データが得られるとされています。

このMVPの考え方もとても重要です。本書でも「誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない」としていますが、低品質のMVPであっても、その後の高品質な製品開発に役立つのです。
そして製品やサービス開発で問われるのは「この製品を作れるか」ではなく、「この製品は作るべきか」「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」です。

MVPはサービスによって様々で、シンプルなスモークテストに過ぎない物から、プロトタイプで問題が多く機能もかけているものまで幅広い。
MVP自体がブランドを傷つけるような事があるのであれば、別サービスやブランドとして出す事が最も安全な方法でもあります。そして往々にしてMVPは悪いニュースをもたらす事を覚悟すべきなのです。

評価とピボットの部分についても、とても重要です。「虚栄の評価基準」で判断するとピボットがとても決断しにくいものとなりますし、仮説が曖昧だと完全な失敗がなくなり、これもまたピボットできなくなる原因となるのです。
ただしピボットとは方向転換として1からやり直す事ではなく、「それまでに作ったものや学んだことをその目的を変えて再利用し、もっと優れた方向をみつけること」なのです。それはWHYが変わる事が無いので当たり前でもあります。ただHOWが変わるだけなのです。

リーンスタートアップでは最初に述べたとおり「構築」「計画」「学習」のサイクルをいかに早く回すかが重要と述べましたが、それを実現するのが"小さなバッチ"という考え方です。ここでいう「バッチサイズ」とは「段階的に進む作業において、ある段階から次の段階に進む仕掛け品の量」のことです。
それは、リリースする機能の数だったり、作業量だったりと様々なものがありますが、バッチサイズが大きくなれば大きくなるほど、それもまたピボットすることを難しくする1要因となるのです。したがって、バッチサイズとして1機能で顧客に見せられるようなものであれば、そこでテストすることも良いでしょう。
本書でもこれは「構築-計画-学習のフィードバックループを競合他社より短い時間で回せる」という点が効用だと述べられています。

本書の考え方はアジャイル等、従来のシステム的な考え方を知っている人にとっては、また新しい手法が出てきたと思うだけかもしれませんが、学ぶ部分としてはドキュメントよりもMVPというプロダクトにより顧客から学ぶ事、そして正しく評価することが重要です。またデザインで古くから用いられてきた「デザイン思考」の概念やHCDの概念をプログラム側へも導入していくという点で多くの発見があるでしょう。
逆にデザイン側にとってはアジャイル並びにバッチ概念を得ることでスプリットテスト(ABテスト)の可能性や会社・サービスの中でいかに重要な位置にいるか把握することも可能だと思います。
マーケティングとしてはシステム及びデザインでの手法を学び、プロトタイピングやMVPとしてのマーケティングや検証へ繋げることが出来るでしょう。

今はセミナー等で聞かない事がなくなった「リーン」という考え方ですが、会社のビジネスモデルにおける自身の位置付けや仮説検証、「Value Proposition」や提供チャネルという大枠に加え、実行からピボット、そしてキャズムを超えた時のホッケースティック曲線(トルネード・ボーリングレーン)へと繋がっていき、従来までの知識がすべて繋がり、とても面白いと感じています。

リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
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