【読了】ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術

ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術


爆発的ヒット・・・iPhoneなどいくつかの商品が頭に浮かぶかもしれませんが、過去の事例をもとに、その爆発的なヒットのポイントをまとめたのが本書です。

本書ではディマンドを生み出す人を「ディマンド・クリエーター」として、その人が共通して考えるプロセスを大きく6つにまとめています。

1.マグネティック:機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す
2.ハッスルマップ:時間とお金を無駄にする「欠点」を明らかにする
3.バックストーリー:「見えない要素」で魅力を強化する
4.トリガー:人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう
5.トランジェクトリー:魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす
6.バリエーション:「コスト効率の高い製品多様化」を図る

副題的に書かれた部分だけでは内容が非常につかみにくいのだが、1のマグネティックとは飛び抜けた機能性を備えていたり、UIや製品デザインなどから来る感情的な結びつきによって"この商品を気に入ってる!"という状況を作り出す事を指します。

本書では
M(マグネティック) = F(機能) × E(感情)
と表されています。

2のハッスルマップに関しては、ユーザーの期待を裏切る、ユーザーが不満とする軋轢というハッスルをいかに把握するかが重要だということです。そこで考えるべきは一言で言えば「デザイン」ですが、その中には機器デザイン、経験デザイン、ビジネスデザイン、サービスデザインなど様々なデザインというものが存在します。アップルなどのワンクリック・ワールドと呼ばれる概念は特にその意識が高く、顧客の要望の一部しか満たさない新製品に関しての評価は非常に低く位置づけられている。

3のバックストーリーは、そのままですが、新しい技術やサービス、デザインだけで直接ディマンドに結びつくことはなく、セレンディピティや運、そしてバックストーリー要素も含めて初めて爆発的ディマンドに結びつくことが多い事が書かれています。

4のトリガーもそのままの意味ですが、様子見客をマグネティックな製品に心から惹きつけ、顧客へと変えるために必須となるのが、このトリガーです。
カーシェアリングサービスで有名なジップカーで言えば、そのシェアされている車がいかに自宅から近くにあるかという「密度」、キンドルで言えば「書籍への瞬間的なアクセス」、ネットフリックスで言えば「配送速度」、ネスプレッソで言えば「トライアル」にあたります。

5のトランジェクトリーはディマンドの潮流を作り出すだけではダメで、その顧客の上がり続ける期待に応え、さらにその期待を超えるためにひたすら改善し続ける事を示します。人はサービスに触れることで初めてその欲求や不満に気づく事も多いわけですが、ディマンドによる潮流を作り出すことで、そこから生まれる顧客の声を無視することはできません。新たなハッスルマップによって顧客が離れたり、ライバル企業に先を越される事は十分に考えられます。より大きな潮流へと変化させるためにはトランジェクトリーが必須となるわけです。

6のバリエーションは簡単にいえば、セグメントもしくはワントゥーワンマーケティングにあたるものです。顧客をいくつかのグループに分け、そのセグメントごとにサービスを変化させたり、路面店のような1顧客、1顧客に対してサービスを行うという考え方です。この場合もそのセグメント、その1顧客ごとにハッスルマップを作成することが重要になります。

このようにディマンドクリエーターは、ある程度共通したポイントを外さず施策を実行するわけですが、最大の障壁はサービスローンチです。
顧客のハッスル・マップを充分に理解し、そのハッスルを改善して顧客の暮らしを大幅に向上させたいと思うのであれば、すべてのバックストーリー要素を特定して所定の場所に配置することが必要だと述べています。

またローンチを成功させディマンドを創出している人は、決して賭けをしようとはせず、バットを振った時はヒットという考え方をし、「品質」を最も重視します。そしてトヨタのプリウスの例として書かれているが、複数のアイディアを作り出し、それを現実的な競争という外的圧力を加え、最も良いデザインを選ぶ(自然淘汰)というプロセスで失敗を防ぐ事も重要なのです。

以上のように、サービスデザインについて色々読んでくると、目的を示すディマンド(WHY)を満たすために外してはならないポイントがいくつかあるわけですが、リーンスタートアップ的な考え方とスタートアップ時のデザインを複数用意するなどが重要であることがわかります。

ディマンドについての書ですが、本書のなかで少しハッとしたのが新薬をアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可を得るために「メルク」という企業がFDAに対する発想を転換したという部分です。新薬を通すためと考えた場合、通常FDAは敵として、コントラリアン的態度で望むわけですが、「メルク」のバジェロス氏は従来の「できるだけ波風立てずにFDAにとやかく言わせないためにはどうしたらいいか」という考え方から、「この大切な顧客は決断を下すためにどのような情報を必要としているのか」という考えに転換したのです。

この考え方はウェブサービスや他の様々なサービスデザインでも当てはまりますよね。
サイトやサービスを利用するユーザーがその場で決断を下すためには、どのような情報を必要とし、どのように見せることが必要なのでしょうか?

その部分も踏まえ、再度デザインというものを捉え直したいところです。


ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術
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