この書を読むと人と人との関係というものを再度見直さざるを得なくなるとともに、自分の未熟さを知るわけですが、インターネットというOnlineが生活の中心に入り始め、OfflineだけではなくOnlineサービスについても考えさせられました。
ヘンリー・フォードの「成功の秘訣があるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場から物事を見ることの出来る能力」という言葉や、人のためにつくすことの大切さなど、人生訓として心に留めておく必要のある言葉や考え方の数々が本書全体をとおして散りばめられているわけです。
この本を読んでいると、前職の会長が末端の人間の名前や趣味などを1年たっても記憶しており、立ち話で話題に上がり、衝撃を受けたことを思い出しますが、今インターネットでSNSが中心となり、より自己へ関心が向かいやすくなり、生活の中心に入り込んでいることを考えると、インターネット上でサービス提供側が本書に書かれている精神を作り出す、即ち舞台を用意することが重要なんだろうと感じました。
インターネットで自分の興味が中心となり、何か特別な考えがなければ、ある人物に気に入られたい、関係を持ちたいなどとは考えにくくなっているのではないかと思っていますが ー それは自分の興味関心のある情報しか取得しないということにも繋がりますが ー インターネットのサービスに対するエンゲージメントとは何かを考えると、そこで欲しい情報が得られるということももちろん大切ですが、サービス提供側が如何にその人の関心を表に出し、その人を舞台に上げることが重要なのかもしれないと感じました。
特に趣味の分野においては、その拘りを「いいね!」と言ってもらえる環境づくりが大切なんだろうと再認識しました。クルマやバイクのカスタムで考えると、もしカスタムされた写真を見て、「あの商品はなんだろう?」という疑問がその場で解決できる情報の見せ方をしているのであれば、真のリコメンドというのは極端かも知れませんが、カスタム車両の写真を並べるだけでもいいのではないかと思ったりもします。それは本書でいう「思いつかせる」という部分の実現です。メールマガジンで数点の写真だけを送るという方法も可能になる気がします。
「対抗意識を刺激する」というのは現在のマーケティングでいうゲーミフィケーション分野なのでしょう。あえて見せる事で対抗意識に火をつける。そしてそこをフックにエンゲージメントを高めるという手法です。
インターネットだからこそ、キュレーションから生まれるセレンディピティとエンゲージメントの両面からユーザーニーズを強くサポートし、強化するという流れを作り出すことが出来るのかもしれません。そもそもウェブサイトで1対1の対応が出来ないからこそ、提案方法が難しく、セレンディピティの重要さが語られるようになったのかもしれないと思います。
一方で、ウェブ上での評判という側面もインターネット上のブランドブランディング的な観点からも重要で、考えなければなりません。SNSでのポジティブな拡散やネガティブな拡散、炎上はサービス提供側の不誠実さから端を発するものが多いのかもしれませんが、企業と個人の1対1で受けた1個人の印象がSNSへ拡散することもあり、古くは東芝クレーマー事件から現代の炎上に至るまで、1対1においても相手を尊重した対応が必要になることでしょう。
今、インターネットにより過去に例がないほど個人がフィーチャーされ、自分中心の考え方が板についてきていますが、ウェブ上での「おもてなし」や相手の立場にたって考えるというような基本的なコミュニティ概念をインターネットで形成すべきなのは企業側が率先すべきなのではないかと感じました。
人を動かす 新装版
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