デザインは“世界観”を築くためにある ― WOW 鹿野護のUI・デザイン論
人は感覚器官の中でも視覚に大部分を頼っていますが、映像によって人の行動が制限されるという概念は「アフォーダンス」にも繋がる概念です。視覚で捉えることにより習慣的に期待されるアクションが生まれ、それを実行に移す。そのアクションが失敗すると、判断脳へと切り替わり、別の手法を試します。
ウェブデザインとは、その期待を裏切らない、考えさせないようなスムーズな動きを実現することが大事です。
スムーズな動きを全て実現したもの、それが一つの世界観になるのでしょう。
一つの世界観が出来上がっている事は非常に重要ですが、単にそれだけであれば「統一感のあるサイト」、「目的を見失わないサイト」などの表現が合うサイトになります。もちろん、そこも実現できていないサイトだらけで、WEB担当者は日々改善を続け、まずはその段階までサイトを構築することが必要でしょう。
ただ鹿野さんは、それだけでは記憶に残らないと言います。
初めて出会ったサイトで「偶然性」、即ちセレンディピティを実現する事で印象付け、再びリピートしたくなるサービスが出来上がる。
ただし、セレンディピティも単にランダムだったり、ユーザー行動をもとにしたレコメンドというものよりは、むしろ「キュレーション」という概念。ただ、インタビューでは深く語られていないものの、「Stumbleupon」を推薦されているということは、キュレーションされたカテゴリ的なものをユーザーが選択するという事が必要になります。
1回目のセレンディピティとキュレーションの部分はそのサイトの目的、例えばECサイトを想像すると矛盾点のように感じられますが、情報サイトであれば矛盾点ではないかもしれません。
鹿野さんはECサイトを手がけるとしたら?という質問で以下のように答えています。
インフォグラフィックス的な要素を軸としたデザインをしてみたら面白いのではないかと思います。もっとダイナミックなレイアウトで、グラフィックデザインがそのまま情報のデザインになるような…。「地下鉄の路線図」じゃないですけど、ピクトグラムで終わらず、もっと情報全体の構造を指し示すようなデザインをやってみたい
つまり、商品を探索し発見するというセレンディピティ性を情報デザインという形で実現するということです。
これは規模によって相当難しい部分ですよね。ただ商品の分類やサービスなど、色々と商品を区切った先で実現することは可能だと思います。
色々と思いを巡らせてみると、ECサイトで一番ランディングページでどこが多いのかを考えると、サイトによって異なるとは思いますが商品詳細だったりするのではないでしょうか。
また、同一サイト内で商品詳細への主要導線を探ってみると、もしかすると、目的の商品まですぐにたどり着ける導線設計とセレンディピティ性を提供するデザインは共存できるのかもしれません。
ある家電製品に付く部品に、付かない部品を見せても全く意味はありませんが、その家電製品が既にキュレーションのキー足りうる訳ですし、情報デザインによりユーザーが新しい利用方法を発見することもあるかもしれません。
何か色々考えていると、とても面白いものが出来そうだと予感させてくれるインタビュー記事でした。
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