「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)
インターネットを国際的に規制しようという動きはSOPAやACTAだけではありません。農業分野や自動車関連でとても話題となったTPPの中にもアメリカが知財関連規制に関する法案を持ち込んでいるのです。
本書ではTPPで議論されている「ACTAプラス」と揶揄される知財関連文書で、日本の法律と照らし合わせ大幅に変更となるであろうと思われる箇所の解説と日本のインターネットにおける実情、そして、どうしたら「万人が平等に参加できるオープンなルールが情報社会を統治するようになるのか」という疑問を読者に提起し、個々人が今世界で何が議論され、それを受けて何をすべきか。それを考えさせるものです。
本書最後には参考としてTPPで議論されていると言われる知財関連文書の日本語訳抜粋がそのまま掲載されています。著者の立場としては賛成でも反対でもなく、"いつでも「文化の側」に立ちたい"というものですが、アメリカが持ち込んでいるTPPの議論を解説する中では「これはどうなのか?」という疑問を著者も感じながら書いている事は間違いありません。
アメリカが各国に求めている知財規制とは本書25ページから抜粋すると、
・著作権保護期間の大幅延長
・著作権・商標権侵害の非親告罪化
・法定賠償金制度の導入
・アクセスガードなど、DRMの単純回避規制
・真正品の並行輸入に広範な禁止権
・米国型のプロバイダーの義務・責任の導入
・音・匂いにも商標
・診断・治療方法を特許対象に
・医薬品データの保護
というものです。
各項目の詳細な解説は本書で読んでいただきたいのですが、一番誰でもわかる例としてはやはり「ミッキーマウス」が挙げられるのではないでしょうか。
読んでいて何度も考えさせられましたが、著作権が切れディズニーの許可無しに第2、第3のディズニーランドが国内に出来たり、グッズが販売された場合、そのクォリティや本場を上回る施設により人気を博することもあるだろうし・・・などと何度も考え、結局自分の頭の中でどうすれば知財を守りながら、皆が納得できる解決策になるのだろうかという部分に答えを出すことはできませんでした。
インターネットではよく議論されている内容なので、もしかすると未完成ながらも代替案が出てきているのかもしれません。しかし、日本においては既にACTAが批准されました。
勉強不足ながら本書で解説されている項目全てがACTAに盛り込まれておらずTPPに持ち込まれている内容なのかどうかを知りません。しかし、医薬品データの保護やISP監視義務あたりはACTAにも含まれているはずで、この部分は内容が被っているのではないでしょうか。
日本ではジェネリック医薬品を作ることができず、医療分野に関し後進国となっていくのでしょうか?また、法定賠償金制度の導入や米国式のISP監視義務が発生した場合、訴訟の増加や賠償金の額の増額など、様々な問題が出てくるはずですが、日本においてもそんな状態へ繋がっていくのでしょうか?また、ACTAの批准によりポリシーロンダリングは国内でどのように行われていくのでしょうか?
本当に色々考えさせられる本であり、一読をオススメします。
「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)
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